IRとCSR
ブランディングを行う上で重要な要素の1つである.IR・CSRについてみてみましょう。
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IR
IR(Investor Relations/投資家向け広報活動)と聞くと、株主向けに企業の業績に関する情報を提供するための資料で、難しい数字が並んだ面白みのないものであるというイメージが強いかもしれません。また、大企業や上場企業のみが行うものだというイメージもあるでしょう。しかし、IRはブランディングを効果的にするための格好の対象なのです。
そもそもIR活動とは、成長戦略を数値に基づいて資料で説明することです。現状の企業の強みを紹介し、市場機会を分析した上で勝ち抜くための戦略を公開。そして将来実現したいビジョンを語ることで成り立ちます。社長や担当者だけがIRを語るのではなく、全社員が成長戦略に従って活動することで、企業価値は大きく向上します。また、読み手に取って伝わりやすいIRを公開することで、企業の戦略や価値をユーザーに理解してもらうことが可能になり、なおかつ高いユーザビリティに対して好感を持つことは間違いありません。
一般財団法人日本IR協議会は、優れたIR活動を実施している企業を表彰する活動を行っています。2018年に大賞に選ばれたエーザイは、情報開示に積極的で経営トップと投資家が経営課題を率直に語っている点が高く評価されています。業績に影響を与える可能性のある情報は適時開示し、迅速に説明会を開催するなど投資家やユーザーにとって安心感を与える運営を行っています。
https://www.jira.or.jp/activity/bluechip.html
ホスピタリティの代名詞的存在であるオリエンタルランドのIR情報ページも傑作です。「決算短信」や「決算説明会」、「株主通信」など様々な情報をジャンルごとに分けて冊子化しており、さらに冊子の説明部分には「難易度:やさしい⇔むずかしい」という表記が記載されています。冊子の内容もデザインにこだわっており、まるでファンクラブの会報を読んでいるような気分にさせられます。読み手のことを第一に考えたこの構成は、まさしくオリエンタルランドのブランドを体現していると言えるでしょう。
http://www.olc.co.jp/ja/ir/library.html
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CSR
CSR(Corporate Social Responsibility/企業の社会的責任)も、企業ブランドを構築する上で有効です。ブランディングは、強い商品ブランドによって顧客のロイヤルティを獲得するというイメージを持たれていますが、CSRによって企業ブランドを築き上げ、ユーザーをはじめとするステークホルダーからの信頼度とエンゲージメントを高めるという視点も重要になります。企業は利潤追求を目的として運営されますが、長期的に存続し顧客に愛されるためには、社会の一員として企業を取り巻くステークホルダーと有効な関係を結ぶ必要があるためです。
例えば、日清食品の主力商品であるインスタント麺「カップヌードル」は、リフィル販売をすることによって容器の資源削減に努めています。トヨタ自動車のハイブリッドカー「プリウス」は、有害汚染物質排出量を削減することで環境に優しいというイメージを獲得。TOTOは、水の使用量を抑えた水洗トイレやユニバーサルデザインを取り入れた商品を積極的に開発しています。意識の高いユーザーはこのような企業姿勢を高く評価し、能動的に商品を購入する傾向があります。
https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-11627.html
CSRは企業規模の大小を問わず、どのような組織体でも取り組むことができ、社会にとって望ましい形で存在感を発揮することが可能になります。その企業ならではの強みをCSRで発揮することで、時代が求める新しい企業競争力となるでしょう。また、社会に対してどのようなミッション・バリューを提供しているかということは、とくに優秀な人材獲得に大きく寄与します。
