統合報告書/組織の戦略〜その4〜

統合報告書/組織の戦略〜その4〜

2019.09.02defacto02

  • 統合報告書 <作成のポイント>

ここからは、実際に統合報告書を作成する上で、留意すべき点について述べていきます。フレームワークでは、最低限、記載しておくべき7つの内容について指摘しています。

 

1、組織概要と外部環境

統合報告書では、企業がどのような事業を、どのような環境で進めているのかを説明する必要があります。これには、主要な事業活動、事業構造、その企業が身を置く市場、扱う製品・サービス、市場での位置、などの企業概要が含まれます。加えて、売上高や従業員数、事業展開している国名や数など、定量情報を絡めて説明する事で企業としての輪郭がより鮮明になるでしょう。

また外部環境については、社会情勢、政治的な背景、環境問題など、企業が長期的に価値創造する上で影響を与えそうな要因の説明も求められます。

 

2、ガバナンス

組織のガバナンス構造は、企業の価値創造をどのように支えるのか。その点についての明快な説明も求められます。経営に責任を持つリーダーの能力や経営ビジョン、意思決定構造や性別・人種などの多様性、などが含まれます。ガバナンスのプロセスを事細かく説明するよりも、企業価値創造の過程でガバナンスがいかに適切に機能しているか、を分かり易く説明する事が重要です。

 

3、機会とリスク

企業価値を創造する上で、影響を及ぼす可能性のある機会とリスクはなんであるか、それらを企業が正確に把握し、的確に対処する事が出来るかが問われます。統合報告書では、企業が現在置かれている状況で、影響を与えうる内部的・外部的要因の洗い出しが求められます。ここで気を付けておきたい事は、機会やリスクを単に列挙するのではなく、報告書の対象者が企業価値創造力を判断する上で重要な項目を、企業の戦略やガバナンスなど、他の要素と関連付けながら説明する事が望ましいでしょう。

 

4、戦略と資源配分

企業を取り巻く外部環境や、認識されている機会とリスクを考慮し、企業はどのようなビジョンを掲げ、それを実現するための戦略と、目標達成に向けた資源配分を企図しているかを明記するべきです。さらにそれらがビジネスモデルや、機会・リスクといった他の要素とどのように関連しているか、を説明する必要があるでしょう。加えて、戦略を達成する上での課題や目標達成までのタイムスケジュール、達成の度合いを客観的に計れる指標などを決めておけば、戦略達成までの道のりを示すことが可能です。

 

5、ビジネスモデル

統合報告書では、事業展開する上でビジネスモデルがどのようなものか、説明する必要があります。ビジネスモデルを構成する要素は、インプット・事業活動・アウトプット・アウトカムの4つです。企業は戦略に則して、先に記した6つの資本をインプットし、事業活動を行うことで製品やサービスをアウトプットします。それにより、収益やキャッシュフローなどの内部的なアウトカムと、社会や環境に対する影響や顧客満足といった外部的なアウトカムを生じる事になります。それらがまた6つの資本という形で蓄積され、次のインプットに活かされるのです。この一連の流れをビジネスモデルと呼び、企業のコアコンピタンスとして、報告対象者が理解できるように解説することが求められます。さらにはこのビジネスモデルが、どれだけの持続可能性を秘めているか、説明しなければなりません。一例を言うと、その企業が市場において、他社と比べてどれだけ差別化されているか。あるいは、企業が提供する製品・サービスが販売後、定期的に収益をもたらす仕組み(保守・修理、使用頻度に応じた課金体制など)が構築されているか、などです。

 

6、企業実績

企業が掲げた戦略目標がどれだけ達成されたか、その進捗状況を客観的に示す必要があります。目標を達成したことで、上述した6つの資本がどう変化したか、明示するのです。そして財務資本提供者が、企業の将来に向けた活動を評価する際に必要な情報を示すことが重要になります。これには数字の裏付けが不可欠の財務情報と、非財務情報との適切な関連付けによる説明が望ましいでしょう。

 

7、将来の見通し

企業戦略を遂行する上で、今後、企業が抱えると思われる課題や、今の時点で予測される不確定要素を挙げ、それらが将来の価値創造に与えうる影響についても触れておかなければなりません。経営陣が企業を取り巻く外部環境を長期的にどう捉え、企業活動への影響をどのように想定し、考え得る影響に対してどう対応するのか、どこまで準備が整っているのか、報告する義務があるのです。

 

 

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