統合報告書

統合報告書

2019.09.14defacto02

統合報告書は、企業の情報発信や価値向上のためのツールとして近年注目されており、大企業だけでなく中小企業でも取り組むケースが増加しています。統合報告書とは企業の強みである知的資産と財務データの両観点から、経営ビジョンや今後の事業展開についてまとめた報告書です。

 

  • 財務データと定性的データ

財務データには定量的な情報であり、売上や利益など損益計算書に記載されるデータと、貸借対照表に記載されるデータが存在します。これらは企業の経営情報を如実に表す情報でありますが、読み込むためには労力がかかり、社内外のステークホルダーに企業の強みを伝えるために十分とは言えません。

そこで重要になるのが、知的資産である定性的データです。経営理念や経営ビジョン、経営能力の高さ、社員のスキルやノウハウ、商品開発力や商品力、優良な仕入れ先や得意先などがこれに当たります。これらの情報は決算書の数値データには現れませんが、売上や利益を創出するための重要なファクターです。

知的資産に関する情報をまとめた資料を知的資産経営報告書と言い、これを活用することで、社内外のステークホルダーに対し、決算書では表現できない企業価値を理解してもらうことが可能になります。知的資産経営報告書と決算書の内容を組み合わせて、統合報告書を作成することで、より説得力のあるブランディングを構築することができるのです。

 

  • 知的資産の情報を開示することの効果

例えば、東京大学は創設140周年にあたり統合報告書をリリースしました。それまでは定型的な財務レポートを公表していましたが、大学の実態を正しく理解してもらうためにあるべき情報開示について、学内で議論が紛糾。標準的な様式で記載される決算書だけでは無機質な内容になってしまい、ステークホルダーの興味関心をひくことが難しいという課題を重視したのです。有識者と議論を重ねる中で、大学の事業成果を伝えるためには研究や教育といった知的資産の情報開示が必要だという結論になりました。そして、「学術に投資しても即時的なリターンは約束されないが、社会が良くなれば自分たちの幸せにつながるため、東京大学を応援したい」とステークホルダーに受け止めてもらうためのブランディングを検討。その結果、「大学の使命は学術による社会貢献」というコンセプトをかかげ、学問の成果は数十年かけて現れることもあるものの、確実に社会をいい方向に導くという強いメッセージを発することになりました。

http://between.shinken-ad.co.jp/univ/2019/01/tokyodaigaku.html

このように、統合報告書は企業価値を理解しブランド力を向上するための、強力なコミュニケーションツールとなり得るのです。

Tweets by defacto_com