中小企業のコミュニケーション戦略
自社と顧客との良好な関係を築くには、コミュニケーション戦略が大きなウェイトを占めると言ってもよいでしょう。しかし、「うちの商品名も社名もあまり知られていないし、第一、人も予算もそんなものに割けるほど余裕はないよ」というように、中小企業の経営者の方々はこうした戦略にあまり興味を示さない方が多いかもしれません。
コミュニケーション戦略を実行に移すために、専門のコンサルティング会社に依頼するという手段もあるのです。
「ブランド」「人材」「予算」
コミュニケーション戦略は、自社の商品やサービスを顧客に認知させ、「買いたい」という気持ちを起こさせるという、マーケティングの中でも重要な戦略の一つです。
コミュニケーション戦略の基本は、企業の方針と事業目標にあります。企業方針は企業理念と言い換えても良く、経営者のみが語ることのできるものです。自分たちが何を社会に提供しているか、明確なメッセージを伝えることのできる企業は、市場での地位を確立し、常に消費者に選ばれる存在となります。
コミュニケーション戦略を立案する上で、欠かせないのが「ブランド」ですが、中小企業は大手企業に比べてこのブランド力が弱いと言われています。中小企業は品質の優れた製品を生産していても、その製品名や企業名があまり知られていないのが現状です。その結果として、中小企業の製品は、市場においても実際の価値よりも低い評価を受ける、「ディスカウント現象」が生じることになりました。
また中小企業は、自社ブランドの認知度が低いので、マーケティング力やブランディングに関する高度な知識を持った人材が集まりにくいという事実もあります。
中小企業の三重苦を解消する専門家の存在
コミュニケーション戦略を実践する上で、まず把握しておかなければならないことは、「どのような商品やサービスを提供すれば、顧客が満足するか」です。これは顧客ニーズ、あるいは消費者ニーズと呼ばれるものですが、それには市場調査が欠かせません。大手企業ほど、市場調査を重視しており、そのために必要な専門の人材と予算を十分に確保しています。自社の商品やサービスのどの部分が、消費者に受け入れられているのか。自社には何が不足していて、競合他社は次にどのような手を打とうとしているのか。市場調査で採取したデータを活用して、今後、どんな製品を提供するべきかを絶えず検討しています。
市場調査から得られたデータを読み解くには、高度な分析能力が求められます。自社が勝負する市場はどこか、そして今後の可能性はどこに隠れているのかを、データを読み解いて考え出さなければならないのです。
大手企業では、社内にマーケティング部門のような専門チームを擁しているところが多いようです。消費者ニーズに自社の企業理念や理想を照らし合わせ、商品やサービスの開発にいそしんでおり、この繰り返しが自社のブランドを作り上げているのです。中小企業には、この視点が決定的に欠けており、その結果として、前述したような「ブランドなし」、「人材なし」、「予算なし」の「三なし」状態が生じてしまうのです。
では、中小企業はコミュニケーション戦略を実行するのは無理なのかといえば、必ずしもそうとは言い切れません。何事にも専門家というものが存在します。コミュニケーション戦略に特化したコンサルティング会社に依頼することで、上記のような「三なし」状態から脱却することが可能になり、同時に社員にとっても、マーケティングのような慣れないにわか業務に煩わされることなく、本来やるべき業務に専念することができるというメリットがあるのです。
「他者の知見」が欠かせない
中小企業の経営者の中には、自らが現場の最前線に立っている方も少なくないでしょう。ただそういうトップが、必ずしも市場や自社の状況を熟知しているか、といえばそうでもないのが現実ではないでしょうか。会社の将来を見据えて、コミュニケーション戦略に投資しようという中小企業の経営者は、まだまだ少ないと言わざるを得ません。事業経営も順調で、資金がない訳ではないのでしょうが、そこに価値を見出せないと感じているトップが多いということでしょう。一方、資金不足で、コミュニケーション戦略を自社にのみで実践できる状況にはないが、危機感を感じて色々と取り組んでいる企業も存在します。中長期的なスパンで、市場においてどちらが生き残れるかはお分かりでしょう。
創業100年を超える老舗の大手企業が、自社ブランドを見直し、再構築することは非常に重要です。そうすることにより、伝統の上にあぐらをかいた、消費者をかえりみない経営方針を見直すことになるからです。創業時から受け継いでいる企業理念と、現在の社会における自社の役割を見比べてリブランドするには、そうした大企業でさえ、外部からの専門家を招いて意見を仰ぐそうです。
時代の変化を読み取り、社会に則したビジョンや企業価値を見出すには、他者の知見を活かすことが大切です。中小企業こそ、コミュニケーション戦略のプロであるコンサルティング会社の意見に耳を傾けるべきではないでしょうか。